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2019年7月5日 : ニュース

男女共同参画基本法施行から20年 ②


(2019年6月26日熊本日日新聞参照)
 1999年の男女共同参画社会基本法の施行から20年。連載の2回目は、高いがん耐性を持つ長寿ネズミ「ハダカデバネズミ」の遺伝子研究を進める熊本大研究者の妻を、合志で支える同大研究員の三浦裕さんに寄稿してもらった。
◇みうら ゆたか 1971年東京都生まれ。東京外国語大卒。雑誌編集者、北海道大研究員などを経て2017年から熊本大研究員(老化・健康長寿学講座)。熊本大大学院生命科学研究部准教授である妻の研究室を運営しながら、2人の子どもを育てる。

寄稿 熊本大研究員 三浦 裕さん「稼ぐ人が偉い」価値観疑う 

 我々が結婚したとき、妻は慶応義塾大学の若手研究者、僕はフリーランスの雑誌編集者でした。収入は、たぶん同じくらい。入籍後すぐ、妻は北海道大学で自分の研究室を立ち上げるチャンスを得ました。私は当時、カメラ雑誌の編集を約10年続けていて、幸いなことに「お役に立っている」という実感はありましたが、かといって、別の人にはできない、というほどの仕事でもありません。
 一方の妻は、恩師の元を離れて、自分が「研究主催者」として独立する大切な局面でした。北海道に住んでみたい、という気持ちもあり、迷わず自分が仕事を辞めることにしました。札幌移住後は、妻の研究室の経理事務や実験動物の管理を担当することになり、当然ながら、長男の誕生後は僕が育児休業を取得しました。
 妻の仕事を支えたい、という熱い思いがあったわけではなく、その場しのぎの成り行きで選んだ道なのですが、妻の下で夫が働いていることを知って驚く先生もいらっしゃいます。妻は女王を中心とした真社会性ほ乳類である「ハダカデバネズミ」の研究をしているので、それになぞらえられたりして・・・。
 
 今のところ、妻が次男の送迎をしているほかは、家事の大部分を僕が担当していますが、これも適材適所として合理的に考えた結果です。家事労働者としての妻よりも、研究者としての妻のほうが比べものにならないほど有能なので、得意なことに力を集中して成果を上げてもらったほうが、三浦家の「生存戦略」として有利ですから。といっても、妻は激務をこなしつつ、精いっぱい手伝ってくれています。
 男女共同参画社会基本法の施行から20年が経っても、企業や団体がやるべきことが山積みのまま野ざらしになっているのは、利潤追求と両立できないとか、しがらみがあって制度を変えられないとかいった事情があることは想像できます。
 しかし、家庭においては、夫婦が話し合って、双方が納得できる落とし所を見つけることは可能です。たまたま我が家では、僕が辞職して妻の仕事を手伝うのが合理的でした。ただし、出産や転勤などでどちらかが仕事を続けられなくなった場合、夫婦二人の仕事の価値を比べた結果として、女性が仕事を辞めるか転職を選ばざるを得ないケースは多いことでしょう。
 ここで気をつけたいのは、男女平等についての議論のみにすり替わってしまっていないかということです。例えば、教授や管理職に女性が少ないということは、職業における男女不平等です。でも、社会的なステータスが高くてお金をたくさん稼げる人間は、そうでない人間と比べて上等だと言ってしまっていいのかどうか。それは、その人の属性の一つでしかありません。
 仕事で活躍して大金を稼いでいようが、職に就かずに遊んでいようが、誰かに世話をしてもらわなければ生きていけない境遇にあろうが、人間は平等です。多く稼ぐ人も、少なく稼ぐ人も、どちらも偉いというわけではなく、どちらも敬意を払われ、生き方を尊重されるべきなのです。
 日本人がいろいろな意味で貧しくなってきているせいかもしれませんが、近年ますます「お金を沢山稼ぐ人が偉い」という業績主義的な考え方が強くなっているように感じます。男性よりも女性が多く稼ぐことが難しい社会において、男女の平等を考えていくとき、「稼ぐ人が偉い」という価値観を疑い、まずは意識的に捨て去る必要があるのではないでしょうか。