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2019年7月24日 : ニュース

男女共同参画基本法施行から20年 ③


(2019年7月1日熊本日日新聞参照)
1999年の男女共同参画社会基本法の施行から20年。連載の3回目は、母子保健などを研究し、「本来、女であることは楽しいこと。仕事と家庭の楽しさが矛盾なく存在するはず」と語る津田塾大教授の三砂ちずるさんに寄稿してもらった。

◇みさご・ちずる 1958年 山口県生まれ。京都薬科大卒。ロンドン大衛生熱帯医学研究員などを経て現職。母子保健などを研究。著書に「オムニバス化する女たち」「女子学生、渡辺京二に合いに行く」など。

平等の下 消えた女性保護 

 男女共同参画社会基本法施行20周年は、同時に改正雇均法とよばれる男女雇用機会均等法から20年である。女性の働き方がどう変わったのか、を考えるとき、この二つの法律は不可分である。この20年の最も大きな変化は、「女性たちが働くことがあたりまえになった」、ということ、労働の現場の「女性の保護という意識が希薄になった」こと、そして女性たち自身が「賃金労働市場主義と業績主義を内在化したこと」の三つにあると考えている。「女性たちが働く」ということが当たり前になったこと、「妊娠、出産しても働く」、そしてそのことによって差別されることのない、ということは最も大きな変化である。あからさまな就職差別や、出産により退職を迫られるということは(まだあるにせよ)「やってはいけないことだ」という認識は確かに広まった。

 同時に女だから保護する、という発想は、男女平等とは相いれなくなった。1947年にGHQの肝いりでできた労働基準法では、過酷な労働環境にあった女性を人間として認めようということで、女性に対する保護が盛り込まれた。しかし、雇用機会を平等にするプロセスで、女性に対する保護の3本柱、「(一般)女性保護」「母性保護」「家族保護」はバラバラにされていく。
 まず、91年に育児休業法ができて、「家族保護」、つまり高齢者や子どもの保護については男性も一緒にやるべきことだから女性だけを保護することはない、ということになり、女性保護の3本柱から完全に落とされている。
 次いで、97年の雇均法改正によって「(一般)女性保護」も落とされる。それに伴い、99年には世界にも例がなかったといわれる「生理休暇」制度という文言が消える。女である、というだけで保護されることはなくなったのだ。3本柱のうち、女性は子どもを生むところだけ保護すべきであるが、その他においては男女は平等であるべきということで、「母性保護」以外は全てなくなってゆく。
 深夜労働の制限も撤廃され、99年までは、特殊な職業、例えば電話交換手や看護師、風俗業などを除いて、一般労働に従事している女性は残業の制限があり夜10時以降は一切働いてはいけなかったのだが、夜の10時以降も働けるようになる。いまや、深夜に女性はどこでも働いている。
 99年以降の、男女平等に働きましょう、ただ女であるということだけで保護はしません、とくに、家事や育児に関しては男女両方の責任、という時代になってから、20年経っているわけで、そのような中で、いまを生きるわたしたちの意識が作られている。自分の体が保護されるべきものだとは思わず、生理は、面倒くさいから、ない方が良いと思い、自らの業績に関わる賃金労働だと懸命にやってしまうけれど、家事育児介護は自分だけの責任ではないから、それをやらない夫がわるいのであり、これらに時間をかけるのは仕事の邪魔であり、できるだけ手を抜いて楽をした方がいい、というふうな言葉遣いが内在化されてゆく。
 何より大切なのは賃金労働で、何より尊ばれるのは家の外であげてくる業績で、いつしか、配偶者と慈しみあうことや、子どもを産み育てることは、喜んで引き受けることではないかのような、本末転倒が起きていった。「女の仕事は愛と祈り」、などという言い方は単なる時代錯誤と化した。欧州が実現したような男女双方の労働時間短縮をめざせば、男も女も、愛と祈りに生き、子どもを愛でられる男女共同参画社会にたどりつけようか?