(2019年8月21日熊本日日新聞参照)
詳細な実態把握 急務
[解説]内閣府が、フリーランスとして働く人が300万人超に上ると試算をまとめた。かつては「会社主義」とまで称された日本でも、ITの進展などで組織に属さない働き方が浸透しつつあるが、国は詳細な実態をつかめていないのが現状だ。今回の試算を基に現場レベルの把握を急ぎ、不利な扱いを受けている人にはきめ細かい支援をする必要性がある。
フリーランスの位置付けは産業ごとにさまざまで、フリーという立場を活用して時間や能力を有効活用できている人もいれば、発注側の都合で低い待遇を強いられるケースもある。例えば、建設や運輸では受注が不安定になりがちで、社会保険料や福利厚生費などの恒常的な人件費を抑えるために仕事を外注する構造があり、企業はフリーランスを労働力の「調整弁」とみる側面もある。
一方、内閣府の調査では、企業との交渉力が高くきちんとした契約を結ことができる人は、同じ内容のしごとでも報酬をより獲得できるという傾向も明らかになった。フリーランスを社会として活用するには、契約のルール化や、発注側による無理な要求防止をどう担保していくかが焦点となる。
法的保護課題 早急に検討へ
フリーランスには、それを本業として働く人と、会社などに勤めながら副業として働く人の2種類がいる。フリーの人口は、内閣府の推計では最大341万人。労働政策研究・研修機構の試算でも最大390万人に上る。このうち、雇用契約は結んでいないが事業主から発注を受けて仕事をし、報酬を得る人は「雇用類似の働き方」をしていると呼ばれ、約170万人いるとされる。
発注主に合わせて専属状態で働くなど、実体は雇用されている人と同じような働き方をしているのに、ハラスメント対策だけでなく契約や就業条件など、労働者を守る法制度が適用されないと課題がある。
厚生労働省は今後、契約条件の明示や報酬額の適正化、紛争が起きた場合の相談窓口の設置などについて早急に検討する方針だ。